韓国の特徴的な特許制度
2014年8月6日作成
韓国の特許制度は、以前は日本とほぼ同じ制度でしたが、2007年に韓国と米国との間で自由貿易協定(FTA: Free Trade Agreement)が締結された後、米国の特許制度に類似する内容が導入されました。日本の制度との比較において留意すべき点として、以下の(1)〜(6)があります。
(1)マルチクレームの制限
韓国では、米国と同様、マルチクレームにマルチクレームを従属させることは、認められていません。マルチクレームとは、2以上の請求項に従属する請求項です。例えば、請求項3が請求項1及び2に従属している場合に、請求項5を請求項3及び4に従属させるとすれば、請求項5が2以上の請求項に従属し、従属先の一つである請求項3が更に2以上の請求項に従属することになるため、記載要件違反となります。
(2)プログラム特許
韓国では、プログラム特許は認められていないが、媒体特許は認められています。つまり、プログラムの発明について特許を受けることはできませんが、プログラムが記録された記憶媒体については特許を受けることができます。このため、発明の名称を「プログラム」ではなく、「プログラムが記録された記録媒体」にすれば、特許を受けることができます。
(3)拒絶査定不服審判と再審査制度
韓国では、法改正により、従前の審査前置制度に代えて再審査請求制度が導入され、2009年7月1日以降の出願に適用されます。
拒絶査定を受けた出願人は、拒絶査定不服審判又は再審査請求のいずれか一方を請求することができます。ただし、拒絶査定不服審判では補正を行うことができないため、拒絶査定後に補正を行う必要がある場合には、拒絶査定不服審判ではなく、再審査を請求する必要があります。
再審査を請求すれば、同じ審査官によって補正後のクレームが審査されます。その結果、新たな拒絶理由が発見された場合には拒絶理由が通知され、また、拒絶査定の理由が解消されていない場合には再び拒絶査定が発行されます。再審査で発行された拒絶査定に不服がある場合には、拒絶査定不服審判を請求することができます。なお、再審査請求は、1回目の拒絶査定に対してのみ請求することができます。
(4)新規性喪失の例外
韓国では、新規性を喪失してから1年以内に出願すれば、新規性喪失の例外の適用を受けることができます。ただし、出願時の願書にその旨を記載し、その後30日以内に証明書を提出する必要があります。対象となる新規性喪失行為は、出願公開、出願公告を除く全ての行為です。
(5)国際出願の国内移行
国際出願について韓国の国内段階へ移行できる期間は優先日から31ヶ月であり、この期間内に翻訳文も提出する必要があります。国内段階における補正は、翻訳文の範囲に限られ、国際出願日の明細書に基づいて誤訳を訂正することはできません。
なお、2015年1月1日施行の改正特許法では、PCT出願時の原文明細書に基づく誤訳訂正が可能になります。また、PCT国内移行時の韓国語翻訳文の提出期間が1か月延長可能になります。
(6)実用新案制度
韓国の実用新案制度は、特許制度と同様、審査主義を採用しています。このため、実用新案登録出願についても審査請求を行う必要があります。実用新案権の存続期間は10年です。
(7)参考ページ A.新興国等知財情報データバンク公式サイト、日本国特許庁編集、2014年7月30日閲覧 URL: http://www.globalipdb.inpit.go.jp/
B.韓国特許出願における留意点、朴鍾和著、2014年7月30日閲覧
URL: http://www.jpaa.or.jp/activity/publication/patent/patent-library/patent-lib/201303/jpaapatent201303_032-042.pdf
C.ジェトロソウル知的財産チームホームページ、2014年8月6日閲覧
URL:http://www.jetro-ipr.or.kr/