意匠権を取得するには?
意匠権を取得するためには、特許権の場合と同様に、特許庁への出願手続が必要です。ただし、特許権を取得する場合とは異なり、出願公開制度はありません。また、審査請求制度もありませんので、意匠登録出願すれば、全ての出願が審査官により審査されることになります。
1.効力範囲の広い意匠権を取得するためには?
意匠権を取得しようとする場合、実際に販売する製品のデザインがある程度決まった後で手続を開始するのが一般的だと思われます。しかし、具体的なデザインについてのみ意匠権を取得した場合には、意匠権の効力範囲が非常に狭くなる可能性があります。
意匠権の効力は、そのデザインに類似する範囲にまで及びます。「類似する範囲」の判断は非常に難しいものではありますが、通常、取得した意匠権のデザインが具体的であればあるほど、類似の範囲は狭くなります。デザインが具体的である場合、デザイン上のポイントとなる部分が複数存在することになり、一部のポイントが異なるだけで、類似しないと判断される可能性があるからです。
つまり、デザイン上のポイントが1つしかなければ、そのポイントを模倣した他人の製品は「類似する範囲」に入る可能性が高いのに対して、デザイン上のポイントが複数あれば、そのうちの1つのポイントを模倣した他人の製品であっても、他のポイントが全く異なれば、「類似する範囲」に入る可能性が低くなります。
したがって、意匠権を取得するにあたって、まず、具体的なデザインの中からポイントとなる部分を抽出し、そのポイントを中心とした内容で出願を行うことが、より広い効力範囲を獲得する上で重要となってきます。
2.効力範囲の広い意匠権を取得するための制度
2-1.関連意匠精度
具体的なデザインの中からポイントとなる部分を抽出した場合、そのポイントを中心として、互いに類似するデザインのバリエーションを考えることができる場合があります。このようなバリエーションのデザインについて意匠権を取得することができれば、抽出したデザイン上のポイントを中心として、より広い類似の範囲まで意匠権の効力を及ぼすことができるため、他人が模倣品を製造・販売するのを効果的に抑制することができます。
関連意匠制度を利用すれば、このような互いに類似するバリエーションのデザインについて、一定の条件の下、1つの束として意匠権を取得することができます。
2-2.部分意匠精度
部分意匠制度とは、具体的なデザインの中から抽出したポイントとなる部分について、部分的に意匠権を取得することができる制度です。この部分意匠制度を利用すれば、デザイン上のポイントとなる部分のみを特定して、その他の部分のデザインは具体的に特定することなく出願することができます。
このようにして取得した部分意匠の意匠権の効力は、原則として、その部分と同一または類似のデザインを含んでいる同一または類似の物品に対して及ぶことになります。例えば、携帯電話機の操作キーの配置をデザイン上のポイントとして部分意匠の意匠権を取得した場合、その配置と同一または類似の態様で操作キーが配置されている携帯電話機については、その他の部分(例えば、表示画面の形状)にもデザイン上のポイントがあったとしても、部分意匠の意匠権が及ぶことになります。
部分意匠制度を利用すれば、物品全体としてのデザインが「類似する範囲」に入らない他人の製品であっても、ポイントとなる部分のデザインを含んでいるだけで、部分意匠の意匠権の効力範囲に入る場合があるので、より広い範囲にまで意匠権の効力を及ぼすことができます。